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第43話 「本編7『チタンタワーバー&カーボンクロスバー装着』」

(作成:2000年8月10日 改訂:2001年7月31日)

(TEXT & PHOTO : 宮田 / E36-M3 )

名古屋にあるRedHotCompanyのDIXISブランドから発売された
カーボンクロスバーとチタンタワーバーを装着しましたのでその報告です。
今回はかなりの長文ですので、心して??読んでください。
しかし、持論ばかりなので参考にならないかもしれませんのでご了承ください。

正直に書くと、今回のパーツの装着はボディ剛性を上げたいとか、 回頭性を良くしたいということが目的ではなかったのです。
(結果的にはそうなりましたが。。。)
むしろエンジンルームってエンジンを含むあれだけの重量物が載っているにも関わらず、 その上面/下面は何の隔壁や支柱もなく大口を開けていて フレームは??というと、キャビン付け根から伸びた両サイドの骨格(メンバー)と 前面のビームからなるスクエアなを箱を元に構成されているだけで 果たしてそれでいいものだろうか??という素朴な疑問から始まっているのです。
そこで、エンジンルームを「箱」に見立てた場合に、箱の上面/下面に少しでもビーム材を 設置(左右の隔壁/メンバーに橋渡し)しておきたいと考え、 タワーバーとクロスメンバーを装着しようと考えたわけです。

なので装着前は結果的に装着したパーツが体感的にその効果が得られなくとも それがボディの補剛になればそれはそれで良しとすることを前提で考えていました。

ここで先に車全般的に言えるボディ剛性について先に触れさせてもらうと、 ボディは剛性を上げてガチガチに硬くしてしまうと、直進安定性は向上するものの、 それを引き換えに曲がりにくい車になっていきます。
(意外と知られてないことですが、車体設計を専門にしている方は知っているとのことです。)
いわゆる、曲るにはボディには微妙なねじれやたわみが必要ということなのです。
かといってねじれやたわみが発生しすぎると、かえって剛性感がなく ふにゃふにゃした乗り味になってしまい、曲がりながらフラフラしてしまうので、 ボディ剛性は上げ過ぎず、下げ過ぎずの微妙な味付けにするところが、 各自動車メーカの腕の見せ所でもあれば、思想の違いにもなっているようです。
(でもBMWはノーマルで剛性感があって曲るからスゴイ!)

次にタワーバー、クロスメンバーについての持論を述べます。

BMWの持つ“曲る”という基本はしっかりと活かしたいので、 タワーバーは、装着することによってボディを硬めてしまうのではなく、 装着前と同じように走行中に発生するボディのねじれやたわみを吸収することができ、 且つボディとストラットタワー接合部はしっかりと接合され、 バーにはしっかりとテンションがかかり左右のストラットをしっかりと結び、 補剛の役目をしていて欲しいのです。
つまり、ストラットタワー接合部とバーとの関係は、ボディの左右方向には自由度がないものの、 前後/上下方向には少量なりの自由度を持たせたかったのです。
路面の凹凸によって発生する不均衡な振動をボディで無理矢理抑え込むのではなく、 ボディに負担をかけずにタワーバー側でうまく吸収/分散させたいのです。
うまく表現できなくて申し訳ありませんが、例えとしてイメージするなら 豊島園遊園地にあるトップスピンハードやトップスピンスーパーハード ( http://www.toshimaen.co.jp/ride/ride4.html)のように 左右のアーム(これが左右それぞれのストラットタワー部に相当)の動きが全く別々であっても ライドしている部分(これがタワーバーのバー部分に相当)で、その左右別々の動きを うまく吸収できる...そういうモノがないだろうかということを考えていました。
(あぁ、自分のボキャブラリーの無さが恥ずかしい...(>・<)・・・)
またバーのテンションを保持するために左右ストラットを最短距離で結び、 ストラットタワー接合部とバーはできる限り水平方向にツライチであるとともに、 バーそのものも途中で折れ曲っているモノだと、左右方向のテンションに なんらか影響するのではないかとも考えていたので、バーがエンジンルーム内の 何かに干渉する以外は折れ曲ってるモノは遠慮したいと考えてました。
さらに片側のタイヤ付近に万一大きな衝撃が加わったときに、反対側の衝撃が加わらなかった ストラットへの影響を極力少なくするために、その際はタワーバーのどこかで 折れるなり壊れるなりして、タワーバーそのもので衝撃を吸収できるモノにしたい とも考えてました。
(遊園地の乗り物が折れたり壊れたりしてはマズイけど...(爆!))
もう一つ付け加えるとエンジンルームという非常に高温な場所なので、 バーの素材そのものが熱で伸びや変型しない素材で、且つ非常に強靱な素材を使っ ていてほしいというのもあります。

以上をまとめて具体的にすると

 ●ストラットタワー接合部とバーの連結部がピロ構造になっている。

 ●左右ストラットを最短距離で結んでいる。

 ●装着すると接合部とバーが水平方向にツライチになっていている。

 ●バーそのものは途中で折れ曲ってなく、直線状であること。

 ●万一の衝撃時にはピロ部が破損してボディへの影響を吸収してほしい。

 ●熱に対して影響されにくく強靱な素材を使用している。

というのが自分にとっての理想的なタワーバーなのです。

・・・という高い理想(無謀な理想かも...)を掲げたものの、 それを満足するモノはなかなかありませんでした。
市販のタワーバーを見てみると、ストラットタワー接合部とバーとの連結部が 溶接で固定されていたり、上下方向には自由度があるものの前後方向には自由度が ないものであったり、これでは自分の考えていることとは程遠いモノばかりだったのです。
しかし唯一IDing製のマグネシウムタワーバーの連結部がピロ構造になっていましたが、 現在では入手が非常に困難なことや、大変高価なモノでもあり、装着するには それ相応の困難な道が待っていると思い、IDingについては諦めざるを得ない状況でした。


次にクロスメンバーです。
ロアクロスメンバー(エンジン下に装着)については、これまで多くの方が装着され、 その報告やインプレをいろいろなところで拝見させて頂いてました。
ここで改めてボディについて述べさせて頂くと、
ドイツ車の多くは事故等で前方、あるいは前側方から大きな衝撃力が加わったときに、 エンジンを支えているフレームからエンジンが外れ、下に落ちるという構造を かなり昔から採用しています。もちろんBMWでも同じような構造になっています。
Mercedes Benzでいうとインテグラル・サポートフレーム ( http://www.mercedes-benz.co.jp/philosophy/anzen/mamoru/syogeki2.html) という作りに似たモノです。
これは、前方からの衝撃に対しキャビンを守るために、エンジン/ミッション等の 重量物がキャビンに押し迫ってこないようにされているためです。
しかし、鉄製のクロスメンバーを装着したら、果たして前/前側方からの衝撃時に エンジンがちゃんと落ちてキャビンを守ってくれるだろうか??
また鉄製はボディのメンバーとはボルトで固定されますが、 クロスメンバーそのもので使っているバー1本1本の接合は溶接されていこともあり、 前述したねじれやたわみが吸収できないのではないか??
という疑問を抱いていたのです。
(実際、鉄製でもちゃんとエンジンが落ちるそうです。 by 某有名ショップ社長の体験談。)

ノーマルの///M3の場合、エンジン下を覗いてみると、樹脂製のカバーが付いていて エンジンガードの役目になっています。
クロスメンバーこそは入ってませんが 万一のときにはエンジンが落ちる衝撃でこの樹脂が割れて キャビンを守るような構造になっています。
(つまりカバーは下方からの異物混入を防ぐ保護板であって メンバーの役目はしてないということ。 まぁ、ペラペラの樹脂なのでメンバーの役目をしなくても仕方ありませんが...)
しかしこのカバーの形状っていかにも「クロスメンバーを入れてくれっ!」っていう 形になっているんですよね。
(下の画像は外した樹脂カバーです)


 樹脂カバーの画像


しかし、クロスメンバーに対しては

 ●ボディ左右のテンションを維持しながらも、ボディにはできる限り負担をかけず
  クロスメンバーそのものがねじれやたわみを吸収する。

 ●万一の衝撃時のエンジン落下を防がずにクロスメンバーそのものが破損する。

 ●対水/対薬品、耐熱性に優れる。

というところに主眼を置いていたので、鉄製のは装着する意欲にならなかったのが 正直なところだったのです。

つまりタワーバーにしてもクロスメンバーにしても、 装着後もパッシブセーフティの安全マージンを十分に確保しておきたかったのです。


そんな無謀な理想を抱いたままでいたので、タワーバーにしてもクロスメンバーにしても 宮号には装着することが無理か...と思っていたところだったのですが、 春に名古屋のRedHotCompany( http://www.redhot.co.jp/)へセキュリティシステム の相談で行ったときにそのパーツを見せられてしまったのです。
(旧宮号のときからセキュリティシステムの件でお世話になっていました。)

●チタンタワーバー


 タワーバー画像


 タワーバー画像


●カーボンクロスバー


 クロスバー画像


最初見たときは、「あぁ、凄いパーツが出てきたなぁ...でも値段が高いなぁ...」 としか思わなかったのですが(大変失礼しました。)、日を追うごとに気になるようになり、 自分なりにそれぞれの素材の特性についても調べて学んだり、 また、RedHotCompanyへ何度もメールや電話をして、機能や剛性、耐久性、 そして車体へ与える影響等も含め他いろいろ尋ねさせて頂きました。
(何度も何度も質問してしまいすいませんでした。m(_ _)m)
そうこうしているうちに自分が思い描いている理想に限りなく近いモノであることが分かり 「これはもう装着するしかないっ!」と思い込んでしまったのです。


思い込んだらもう最後?? あとは資金作りです。
日々の食費を削り?? 光熱費を節約し?? 貧しい生活にさらに輪をかけ??
そんなこんなで資金が出来て装着することができました。
(“棒茄”の時期だったのが何よりも幸いした...)

使用感は最初に述べた通り、市街地走行等のステアリング操作が比較的ゆっくりな 走行状態ではあまり違いを感じ取れないようにも思えます。
しかし、交差点やペアピンカーブ等のステアリングの切り出しが大きいところや、 高速時における車線変更時等は、わずかながらですが回頭性が良くなったのではな いかと感じています。

ただ劇的とか目から鱗が落ちるとかいうほどには感じないのが正直なところです。
(これでは装着インプレとしていけないのかもしれませんが、 自分の感覚を正直に書かせてもらいました。)
逆に装着したパーツをいったん取り外せば再確認ができるでしょうが、 やはりもう外したくないというのが本音のところです。
しかし、自分の主たる目的に対しては、ほぼ満足に達していることは事実です。

また、今回装着したパーツは、その名からも分かる通り、大変軽量な素材を使用しています。
それぞれの重量は、
●チタンタワーバー:1.6kg
●カーボンクロスバー:1.3kg
で、両方合わせても2.9kgとなっています。

参考までに従来のタワーバーは軽量なモノでも約2kg、鉄製のクロスメンバーは3.85kg。
そして樹脂カバーを合わせると6kgを超える重量がフロントに掛かることになります。
わずか3kg強の差とはいえ、フロント荷重があるほどアンダーステアが出やすくなるので、 装着するならば、なるべく荷重を掛けたくないとも考えていました。
(ならばホイルの軽量化が先っ!って言われるかもしれませんが、 なにせ資金が...(YoY; ・・・)
・・・ということからも今回の補剛の目的としては、まさに言葉通りの “適材適所”ではないかと感じています。
(いつものごとく自画自賛おバカモードです。)


 タワーバー装着画像


 クロスメンバー装着画像


最後になりましたが、今回のパーツ装着の件で車のボディについて分かりやすく教 えて頂いたRedHotCompany社長の山田さんに心より感謝致します。
ありがとうございました。<(_ _)>

また素材について特に参考になったサイトを紹介しておきます。

■カーボンとは?
  http://www.anaori.co.jp/cHTML/What.html

■カーボンFRP(CFRP)の特性
  http://www.aimilc.ne.jp/~cac/sozai/contents%20to%20sozai.htm

■由良拓也の素材の話
 第1回:カーボンファイバー
  http://www.honda.co.jp/motorsports/hmsc/4/spl/y_07.html
 第2回:カーボンでモノを作るには
  http://www.honda.co.jp/motorsports/hmsc/4/spl/y_08.html
 第5回:チタン
  http://www.honda.co.jp/motorsports/hmsc/4/spl/y_11.html


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