[メンテ3]  (←前) (次→)

第46話 「本編8『パワーチェック』」

(作成:2001年1月15日 改訂:2001年1月16日)

(TEXT & PHOTO : 宮田 / E36-M3 )

宮号が納車されたときから約1年近く思っていたことなのですが、 果たして自分の車はどんな出力特性をしてるんだろう??
・・・という単純な思いが頭から離れませんでした。
ふだん乗っていてもこれで本当に300psを超えるスポーツカーなのだろうか??
と感じてしまうくらいに乗りやすい車であり、その実感がありませんでした。
・・・ということから12月というパワーチェックにいい季節(?)になったので 測定してみることにしました。

そもそもの始まりは納車前は “///M3” というネーミングから、凄くピーキーなスポーツカーを想像してたのですが、実際に乗り出してみると その期待(?)は肩透かしをくらったかのように乗りやすい車なのです。
たしかに1500kgを超える車体をグイグイ引っ張るトルクは感じていたものの、 これが300ps??と思ってしまうくらいに誰もが簡単に運転できてしまう...
・・・というカタログスペックの数値を感じさせないくらいに乗りやすいのです。
なので今回、ノーマルのうちに(いつまでもノーマルだろうけど...) どんな特性が出るかを知りたく、パワーチェックをしてみることにしたのです。
パワーチェックといってもエンジンを降ろしたりする訳ではなく、 シャーシダイナモ(以下シャダイと略)という専用の機械で 駆動輪に加わるパワー/トルクを測定する方法です。
この方法は現状のパワーチェックの方法としては最もオーソドックスな方法です。
この方法は実際に走行する訳ではなく、駆動輪を空転させて(実際には駆動輪を シャダイローラに乗せてローラが負荷になっているので完全な空転ではありません。) タイヤ接地面にかかるパワー/トルクを測定します。

測定を行ったのはKSPエンジニアリング ( http://www.ksp-eng.co.jp/)です。
ここにしたの理由は定期的に測定器そのもののチェックをしてるらしく、 パワー/トルクともかなり正確な値で測定できるとのことを 事前にショップへ確認したからです。
測定方法はまずはシャダイローラに駆動輪が乗るように車を乗せます。
次にシャシダイから車が飛び出さないように、固定された支柱に 繋がれたベルトを車の牽引フックに掛けます。


 M3


そしてフロントから強力な扇風機のような大型ファンを回し風を当て、 車を実走行に近い状態にします。
(これをしないと水温上昇が早くオーバーヒートしてしまう。)


 M3


以上の準備が出来たらふつうに運転するように1速→2速→・・・とギアを上げて行き、 特定のギア(宮号の場合は5速)で固定し、それに伴いシャダイローラが回転してい くのですが、エンジン回転とローラの回転のアライメント(回転を合わせる調整)を するために初めは回転をあまり上げず、タコメータの区切りのいい3000rpmや4000rpmとかで 測定器との調整をします。
しかし、アクセルを踏んでる人と測定器のところにいる人の2人でやってることなので 多少のズレはあるようです。
それが終わるとパワーチェックの本番となり、その固定したギアで 低回転からレブリミット近くまで回して測定していきます。

・・・と前置きが長くなりましたが、測定結果をグラフにしたものが下図です。
(ショップでグラフをもらいましたが、見づらいのでグラフと一緒にもらった 回転数vsパワー/トルク表からMS Excelに数値を再入力した結果です。


 Power


まず、測定環境ですが、乾球温度11.0℃、湿球温度7.5℃、大気圧1039.0hpaの 快晴の日の午前中の測定でした。
数値的には最高出力:317ps/6800rpm、最大トルク:36.2kg/3900rpmとい う結果を得ました。
カタログスペックが321ps/7400rpm、35.7kgm/3250rpmなので、数値的は満足して います。
(回転数が7000rpmまでしか測定できなかったのは前述したズレによるものと思われます。
 エンジンからパルスを拾う方式だと、正確な回転数が出るのでしょうが...)
むしろ自分としては最高出力の数値よりもトルク特性の方が興味を持ちました。
低回転から35kgmを超えるトルクを発生したまま高回転まで維持しているの です。
(特性図中----------が35kgm線)
つまりどこからアクセルを踏んでも太いトルクが発生するということです。

(図中─‐─‐─‐─は最大トルクの36.2kgm線。ピンポイントでなく数カ所で記録 しています。)

ここでいつもながらの持論考察(勝手な推測なので正確ではないと思います。)を してみると,M3Cの乗りやすさはこのあたりに起因しているのではないかと思います。
ときどき、M3B(3.0L)とM3C(3.2L)のインプレを聞いたり、雑誌等で見たりすると M3Bの方が“面白い。”とか“スポーツカーらしい。”ということを耳にします。
私も両車を乗り比べたことがあるのですが、アクセルを踏む度合いに対する気持ち の高揚感というのはM3Bの方が高いように感じていました。
ただM3Cの方が遅いということはなく、むしろ実際に同じ環境で走らせたときには M3Cの方に軍配が上がることがほとんどのようです。
(私のような下手ドライバーではそうではないのでしょうが...)
しかし何故そう感じるかは分からないままだったのですが、 その訳がトルクの出方によるものではないかと思うのです。
M3Cの低回転から沸き上がる太くフラットなトルクは、 気持ちの高揚感というのをスポイルしてしまうものの、ダブルVANOSの恩恵なのか、 乗りやすさをより前面に打ち出しているのではないかと思うのです。
その乗りやすさということで同じM3Cどうしで比較しても、 年式によってもエンジンのトルクの出方が若干異なるようです。
実際に測定してないので自分が乗った印象でしか書けないのですが、 M3Cは年式が高いほど、乗りやすさが出てくるように感じています。
(年式が高いほど装備が充実し、重くなっていることも事実ですが...)
またこれも測定してないので何とも言えませんが、 エンジンの回り方も年式で若干の差があるように思えます。
いずれにせよ、 /// M3という車は、カタログスペックの数値を あまり感じさせないほど乗りやすいスポーツカーであることのように思えます。

最後にパワーチェックをするということは車に大変な負荷を掛けます。
1回のパワーチェックでは距離は1mも動いてませんが、 車にとっては1000〜2000km走行したほどの負荷が掛かると言われています。
なので車の健康のためパワーチェックのし過ぎには注意しましょう。(笑)

[メンテ3]  (←前) (次→)