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第33話 「燃費の話(その3)各メーカーのギア比の設定」
(作成:1997年12月18日 改訂:1998年1月5日)
(TEXT : そえそえ / E39 528i )
各メーカーがどれくらいの加速力(パワー感)と省燃費のバランスをねらっている
のか調査してみました。今回も難しい内容ですみません。でもできるだけ正確に書
きたかったもので。。。。。
<データの読み方>
データは5速・4速(4AT車は4速・3速)で100km巡航時のエンジン回転数と
その時の加速力です。エンジン回転数はギア比やタイヤ外径から算出しました。1
00kmでの巡航時は通常はトルコンがロックアップされるので、実際の回転数も
計算値に近い回転数になるはずです。
また加速力は、カタログのエンジンの性能表からトルク曲線を読み取り、加速に関
する諸要素を掛け合わせて(ギア比、タイヤ外径、車両重量など。100km程度
なので空気抵抗は考慮外)525の5速巡航時を1.0とした場合の比率に変換し
たものです。
例えば540の5速では1.30/1887rpmという数字が入ってますが、100km巡航
時のエンジン回転数が1887rpmで、アクセルを踏み込んだ時に525の5速
に比べて1.3倍の加速度で加速するということです。
名前 5速(4速) 4速(3速) 備考
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
BMW 525i 1.00/2096rpm 1.60/3020rpm 5AT,2500ccNA,170ps,25.0kgm/3950rpm
BMW 528i 1.16/2096rpm 1.86/3020rpm 5AT,2800ccNA,193ps,28.5kgm/3950rpm
BMW 540i 1.30/1887rpm 1.70/2331rpm 5AT,4400ccNA,286ps,42.8kgm/3900rpm
BENZ E240 1.21/2549rpm 1.53/3071rpm 5AT,2400ccNA,170ps,22.9kgm/3000-5000
BENZ E320 1.35/2151rpm 1.71/2591rpm 5AT,3200ccNA,224ps,32.1kgm/3000-4800
BENZ E430 1.40/1976rpm 1.75/2380rpm 5AT,4300ccNA,279ps,40.8kgm/3000-4400
AUDI A6 2.4 1.00/2112rpm 1.44/2846rpm 5AT,2400ccNA,165ps,23.5kgm/3200rpm
AUDI A6 2.8-Qua 1.08/2047rpm 1.56/2759rpm 5AT,2800ccNA,193ps,28.6kgm/3200rpm
トヨタ CELSIOR 1.30/1971rpm 1.82/2617rpm 5AT,4000ccNA,280ps,41.0kgm/4000rpm
トヨタ Aristo V300 1.94/2222rpm 2.83/3127rpm 4AT,3000ccTB,280ps,46.0kgm/3600rpm
トヨタ Aristo S300 1.43/2353rpm 2.16/3333rpm 4AT,3000ccNA230ps,31.0kgm/4000rpm
日産 CEDRIC Ultima 1.68/2294rpm 2.54/3306rpm 4AT,3000ccTB,270ps,37.5kgm/3600rpm
日産 CEDRIC SV 1.27/2392rpm 1.98/3447rpm 4AT,3000ccNA,220ps,28.5kgm/4400rpm
<BMWのギア比は>
BMWは直6とV8で全く性格が違います。直6では5速と4速のギア比が離れてい
て、5速は完全な巡航用ですがキックダウンさせるとエンジン回転が1000回転
も上がって力強い加速を見せます。
但し4速は200キロでレブリミッターに当ってしまいます。5速での加速にはあまり
期待しないほうがよいかも。
V8ではトルクに余裕があるためか5速から4速にキックダウンさせても500回転
しか変わらない設定になっていてます。5速と4速の加速力はあまり変わりませんが
がどちらも力強く加速します。4速でも引っ張っていけば260キロ超の世界に連れて
いってくれます。(実際にはスピードリミッターが効いて210キロまでしか出ない)
いずれも燃費を稼げて気持ち良くも走れるうまいところに設定しています。(但し
525のギア比の設定はエンジントルクの割に巡航回転数が低く燃費は良いのです
が、高速でのちょっとした坂などでは非力さを感じるかも。また直6もV8もピッ
クアップがよくトルクフルで気持ち良く回るエンジンです。この辺はBMWの美点
ですね。)
<BENZのギア比は>
BENZの高速での力強さは数値的にも本当のようです。巡航時のギア比をやや加
速重視の設定に振っているようです。巡航時の回転数が高く軽くアクセルを踏むだ
けで力強く加速しますがエンジン回転数情報から判断すると燃費は期待できません
。しかし実際にはエンジンやミッションの効率が高いためか雑誌の比較試乗などで
は排気量の割にはそこそこの燃費は出ているようです。(雑誌の評価はドライバー
や測定条件が異なったりするので??な所もありますが参考程度にはなるでしょう
。新型SOHCエンジンのエンジンフィールはがさつで、相変わらず低速はかったるい
という風評ですが、燃費の面ではそれなりの成果は出ているようです。)
<AUDIのギア比は>
AUDIはギア比の設定はやや燃費指向のようです。3200rpmという低回転で最大ト
ルクを発生するエンジン特性に頼ったギア比です。加速力データーから判断すると
中速程度まではなんとか頑張りますが、高速域や追い越し加速や上り坂では非力な
のは否めません。回転数データーからは燃費が良いはずなのですが、実際の燃費は
あまり伸びないようです。これは日本の交通環境では地形やアクセルワークの影響
をもろに受けるためと思われます。またクアトロの4駆もフリクションロスの増加
と重量増により、燃費や加速力が悪くなります。ADUIが排気量の割に非力で燃費も
伸びないのはこれらの影響も受けているためでしょう。日本でこのギア比設定はち
ょっとつらいかも。
<国産車のギア比は>
国産4速AT勢は飛びぬけて高い回転数とトルクです。5速がなく4速だけで加速と
巡航を両立しないといけないためこのような設定になっているものと思われます。
加速力はすばらしいが燃費のほうを期待するのは無理です。日本では高速を巡航す
る機会が少なく4速ATで十分と判断されたのでしょう。80キロ以下の領域だけなら
これでもよいのですが。。。。。。。。4速ATは既に時代遅れですから次のモデル
チェンジには5速またはCVTに対応してもらいたいものです。
<ギア比設定の一般的傾向>
ドイツ車の一般的傾向としては、大排気量で大トルクを発生するエンジンでも、そ
の分ギア比設定を変えて巡航回転数を下げているので、5速での加速力はそれほどで
もありません(540と528のエンジンのトルクの差は40%以上あるのに加速
力の差は14%しかない。ただし540の100km巡航時のエンジン回転数はた
ったの1887rpm!。)ただしこのおかげで燃費の差も10−20%程度に押
さえられています。大排気量の特権は200キロ超のスピードでの巡航で遺憾無く発揮
されます。(540は200キロでも3774rpmしかエンジンが回ってない。余裕しゃく
しゃく)
対して日本車はターボ等でトルクをアップしてもギア比はほとんどそのままで、全
て加速力アップに使い込み、燃費は無視しているようです。200キロ以上での巡航な
ど考えなくても良いのでこれで良いのでしょう。さすがにセルシオだけは例外です
か。。。。。
安定したハイスピード巡航のためのドイツ車の大排気量 vs
強力なダッシュのための日本車のターボ
といったところでしょうか。調べれば調べるほどこんな構図が見えてきます。
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