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第45話 「E39マイナートラブルについての集計結果報告」

(作成:1998年8月17日 改訂:1998年9月28日)

(TEXT : 越後屋 / E39 528i )


E39のマイナートラブルについて集計しましたのでご報告させて頂きます。
データ内容は先日、本ホームページ読者の投稿にてアンケートし、返信があった分と、 以前から面識のあるE39乗りの方々にヒアリングした分です。

合計30台程度と数的にはそう多くはありませんが、事実に基づくものであるし、 ある程度の傾向が見出せるのではないかと思います。

お忙しい中ご回答頂いた皆さんには、大変遅くなりましたが、この場を借りて 感謝の意を表させて頂きます。

以下、順を追ってデータ内容の説明とグラフ、考察、結果を記します。


1.データ内容

1−1:登録年月について

本来、製造年月による集計を行うべきだが、それを特定する方法が一般的には 解りにくいため、敢えて登録年月とした。

1−2:車種構成について

約8割が528iであった。ボディー形式は約1割の3台がツーリングであった。
ほか、特別参加のアルピナB10が1台。

1−3:仕様について

デビュー当初はノーマル、プラス、コンフォート、レザー等のパッケージオプションで あったが、'98モデルからはHi-Lineまたは特別限定仕様が出たりでオプション内容が 解りにくくなった。
従って、正確なオプション装備の判断が間違っている可能性はあるが、純正モニター付き は全29台中16台と思われる。

1−4:マイナートラブルの内容について

返信頂いた内容をキーワードによりある程度分類している。
ただし、他に類を見ず1例しか発生していないものはその他とした。
また、あくまでも感じ方による報告のため、個人差のある項目(例えばハンドル振れ、 きしみ音等)は、客観性に欠ける可能性はある。
更に、修理方法および改善したかどうかはバラツキが多いため、グラフ化はしていない。


2.集計グラフ

下記の図のような結果となった。

・縦軸は台数で総数29台。内訳は'96年5台、'97年15台、'98年9台。
・キシミ音とは窓回りのほか、足回りからのものも含む。
・AT関係とは異音のほか、機能そのものに係るものも含む。
・AVフリーズとは純正のモニターのほか、オーディオのフリーズも含む。
・ハンドル振れとは、いわゆる100から120km/hでのシミーのこと。
・メーター回りとはセンターコンソール部も含んだ運転席周辺での不具合。
・エンジン不調とはアイドリング不安定や、夏場の悪レスポンス等。
・サイドミラーとは折りたたみ機能の不良。
・その他とは先に述べたとおり、1例づつしかなかったトラブルの総称。



3.結果・考察

3−1:キシミ音について

全29台中14台で報告があり、最も多いマイナートラブルであった。
年式別の傾向としては、'96で全数、'97で約半数、'98は約1割と減少傾向にある。
一般的な理由としては、'98はまだ新しいためキシミが発生していないとも取れるが、 窓回りのキシミ音については、経験上、新車納後1ケ月頃から発生しており、また逆に、 走行距離が伸びるに従いドア回りからのキシミが無くなったという報告もある。
そもそも設計上での問題ではないか。
窓キシミ音の発生要因としては走行中にウィンドウサッシュ縁のラバーとボディーが 擦れ発生するものである。
走行時には応力変化が起きるため鋼板製ドアヒンジの極微小な変形は当然であるが、 それがキシミ音として発生してしまうと、一般的には車自体の剛性不足或いは、ヘタリ として感じられる。
特にドイツ車好みの人は安全性・剛性感・耐久性を重要視している傾向があり、 期待外れに感じられるであろう。
'98年7月頃からは対策部品を付けたE39が出回っており、ドア回りのキシミ音については 一段落といったところである。
従来の車についてもこれを部品で取寄せ、換装することにより対策できる。
その部品とはドア側のウィンドウ周りの黒いラバーで、ボディー側と接触する内面のみ ベロア材が貼り付けてあるものである。
交換にはディーラで約半日の時間がかかるが、サービスフリーウェイで扱ってくれる。

3−2:AT関係について

シフトレバー付近からのジー音や、シフトダウン時の異音のほか、ブレーキペダルを 踏んでいてもPから動かないといったハードの問題と、走行中アクセルをあおった後、 いつまでたってもシフトアップしないといったシフトスケジュールに対するソフト的 不満の両方があった。
ジー音についてはリンケージワイヤーに重りを付けるといった対策があり、シフト スケジュールについては学習したシフトパターンを一度リセットしてもらうという手がある。
いずれにしてもマイナートラブルとはいえ、主要機関であるミッションに約1/3で 何らかの不満が持たれている訳である。
車格からしてATは当然とは思うが、もしマニュアルシフトであれば、といった希望が 出ても致し方ないところであろう。

3−3:AVフリーズについて

純正モニターのフリーズはナビゲーションの立ち上げ画面で固まることのほか、 オーディオのフリーズに連動しスイッチが入らなくなるものである。
オーディオのフリーズについては、いつも通りエンジンをかけても音が鳴らず、ボリューム つまみのスイッチを押しても電源が入らないものである。
このとき通電のインジケーターは点灯している場合と、消えている場合の両パターンがある。
いずれの場合も何回かエンジンキーのオン・オフを繰り返すと復活するようだ。
また、関係するヒューズ(切れてはいないが)を抜き差しして直る場合もある。
しかしながら、モニター付きの16台中、12台で発生しているということは驚くべき 発生率である。
年式別の傾向としても他のマイナートラブルと違い、新しくても相変わらず出ており、 仕様変更によってもあまり実効は上がっていないようで、メーカー側としては早急に 対策すべき。
でなければ、別オプションは付けたいが、純正モニター無しという選択ができるよう、 セットオプションの変更を考慮してもらいたいところである。

3−4:窓フリーズについて

パワーウィンドウスイッチが反応しなくなるものであり、上下の最中に止まってしまうと いうものではない。
これもエンジンキーのオフによるリセットで復帰するようである。
電装関係のスイッチングをつかさどっているゼネラルモジュールの交換で完治している ケースがいくつかあった。
この原因の場合、同時にサイドミラー等も動かなくなるため、もしフリーズしたら他の 電装品はどうかをチェックすると原因を突き止めやすい。
発生状況としては'96、'97とも約半数で発生しているが、'98では出ていない。
改善されたのであろうか。
しかしながら、窓を開閉しようとするのはそれが必要な時であり、例えば高速道路の 料金所であったり、サンルーフを開けていて雨が降ってきた時であったりするため、 厄介なものである。

3−5:ハンドル振れ

100〜120km/hのスピードでほぼ定速走行している時発生するもので、ホイールのバランス ウエイトが合ってない時のように、ハンドルにシミーがでる。
程度の違いはあるが、微小なレベルのことが多く、実際には僅かな症状が出ていても 感じないケースもあると思われる。
報告状況としては'96、'97とも出ており、発生率は24%。525i+525純正アルミの組み合せ だと出ないという説もある。
しかしながら、本来、高速道路でも抜群の安定性を謳っているBMWのハンドルにシミーが、 しかも、日本の高速道路の巡航速度で発生するということは日本仕様の煮詰めの甘さで はないか。

3−6:メーター回り

メーター回りの各警告灯の不良から、センターコンソール回りにかけての機械的不具合も 一緒に集計した。
少し範囲も広く様々な機器類が集中しているところでもあるため、色んなトラブルが 出ており、一概にどの部品が悪いとは言えないようだ。
しかし、発生割合としては3割程度あり、やはり電装系は弱いと言われても仕方ない ところであろう。

3−7:エンジン不調

合計3例で全て異なる症状であるが、ともにアイドリング程度の低回転時に発生しているため、 機械的フリクション等の問題というよりは燃料噴射コントロールの関係ではないか。
最重要機関であり、バイエルンのエンジン屋製としては納得いかないところである。

3−8:サイドミラー

日本車では考えられないようなことで意外ではあったが、サイドミラー折りたたみでの 動作不良が4例あった。
手動でやれば直接走るのに問題無いのだが、日本の駐車事情では非常に有り難い装備で あるだけに、かえってがっかりさせられる。

3−9:その他

29台中12台と、約4割で1例づつしかないマイナートラブルが発生しており、 実に様々な症例があるものだと驚かされる。単純に価格を見ながら国産と比較した場合、 いかがなものであろうか。
車は部品数も多く、全て完璧という訳にはいかないし、ましてや振動や気候等の使用条件 が過酷な分、ある程度は仕方ないところではあるが、だからこそ、BMW側には顧客を 引き止めておくためのサービス部門の重要性をより一層認識して欲しいところである。


4.結論

4−1:電装系はやはり弱い

AVフリーズ、窓フリーズ、メーター回りと電装系のトラブルが多く、 弱いと言わざるを得ない。

4−2:剛性感をスポイルする要因がある

キシミ音にしろ、ハンドルの振れにしろ、ドイツ車らしい剛性感への期待を 裏切るものである。
実際の物理的剛性が高いだけに非常に残念。

4−3:主要機関部も用心

ATおよび、エンジンといった走行に直接関係する主要機関であっても数例づつの トラブルが発生しており、最悪の場合事故の可能性もあり得る。
やはり、メンテナンス部門の重要性の再認識が必要。


5.参考資料および、謝辞

参考までに、グラフ化の元データを紹介する。
回答頂いた方々には重ねてお礼申し上げる次第である。


登録 車種 仕様 不具合内容
1997年2月 528i Leather+CD 内装キシミ、ハンドル振れ、時々オーディオフリーズ、エンジン始動時アイドリング不調
1997年11月 528i Leather+Nav+CD エアロパーツ取り付け不良、ボードモニターフリーズ
1997年5月 528i Plus エアバック警告常灯、窓軋音、燃料ポンプ異音、ボードコンピューターDISP不良、100キロ振動、夏場アイドリング不良、運転席窓不動
1997年3月 528i Plus 100km/h振動、窓きしみ音、ブレーキマスターバック不良、ATからのジー音、窓フリーズ、エアコン異音
1997年7月 528i Leather+Nav+CD リアサス(カチャカチャ)、ドアキシミ、灰皿不閉、リモコン不良、インパネジー音、ステアリングキシミ、ATショック大、100km振れ
1996年9月 525i プラスP+CD Bピラーキシミ音/ドアキシミ音/ギアボックス交換/後輪異音、シフトワイヤージー音
1996年9月 540i Leather 信号待での振動アイドリング低い、ドアゴムシール摩耗破れ
1997年9月 528i   ウインカーレバー内部つめ折れ、窓フリーズ、ドアきしみ、ブレーキ鳴き、サイドミラー異音
1996年11月 528i コンフォートP 助手席ドア付近からのカタカタ音・シートベルト警告灯つきっぱなし、パワーウインドウ時々不動、100キロでの振動
1997年8月 528i プラスP ドア軋み、ウッドパネルの開閉不良、リアよりの異音(2パターン)、リアドリンクホルダー不良等々
1997年9月 525i 525i限定レザー、540AW 100キロでの振動、パワーウインドウ上下時の異音、AT異音
1997年1月 528i ベーシック ワイパーが動いているときの音が多少気になる
1997年3月 528i コンフォートP+ナビ+CD Bピラーキシミ音、PW・SRフリーズ(PW:2回、SR1回)、ATシフトダウン時の異音(3→2で1回)
1997年9月 528iT コンフォートP+ナビ+CD ミラー収納時異音・動作不良、窓不動、灰皿開時引っかかり、エンジン停止時ギアボックス下から異音(自転 車チェーン回る音?)
1998年1月 528i 特別限定車、レザー、ナビ、SR エアバッグ警告灯表示で運転席側サイドエアバッグ交換
1998年3月 528i Hi-Line 純正ナビ フリーズ× 2回
1998年3月 528i Plus Bピラー異音
1998年3月 528i Hi-Line オンボードモニタのカーナビ初期画面フリーズ、オートクルーズが強制解除される
1998年3月 525i Hi-Line 燃料計が満タンでも針が中央のまま
1996年11月 528i コンフォートP 内装キシミ、ハンドル振れ、時々オーディオフリーズ、AT等多数あり
1997年9月   限定車+CD サイドミラー片方だけ開かなかったり閉じなかったり、エアコン温度不調、ウインドーを下げる時下にドスンと当たる
1998年4月 528iT Leather モニター画面フリーズ、メーター類不動
1996年8月 528i   サンルーフチルト不可、窓フリーズ、スピーカー音出ない、ダッシュボード奥ビビリ音、ドアきしみ
1998年6月 528i special edition 純正モニターのフリーズ
1996年11月 528i Plus ドアのキシミ音、ラジオ等表示不良、ドアミラー格納時異音、センターコンソールカチカチ音、リアサスキシミ、ブレーキキシミ、
1997年8月 Alpina B10、V8 モニターフリーズ、フロアーマット「ALPINA」エンブレム剥がれ、リアカップホルダー開かず、キーリモコン調子悪し
1998年6月 528i Hi-Line特別限定車 ブレーキを踏んでの操作でPからDへシフトできなくなった
1998年6月 528iT Leather+Hi-Line+CD オンボードモニターフリーズ
1997年11月 528i Plus シートベルト取付部から異音、ドア部から軋み音、窓フリーズ


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