[メンテ18]  (←前)

第6話 「納車後のメンテナンス」

(作成:1999年2月15日 改訂:1999年2月15日)

(TEXT : 三四郎 / Z1 & E36-328i )


ご無沙汰しております。
ちっともメンテコーナーらしくないメンテ18の三四郎です。
早いもので三四郎号も納車後1年半を経過し、約7,000kmを後にしました。
この間、Z1にお乗りの何人かの方とも巡り合い、また、オフミでは多くの皆さんに Z1の魅力の一端をお伝えすることが出来て、この車を手に入れて良かったなぁ、と 思っています。
さて、購入の際に気になっていた車自体の信頼性という点から振り返ってみますと、こ れまで立ち往生するようなトラブルや、トラブルに繋がるような気になる不調もなく、 当初考えていた以上に手の掛からない車との印象です。
スタディモデルのような生い立ちで殆どが手作りとは言え、ヨーロッパではBMWブランド で正式に市販された車ですので、当然のことなんですが信頼性や耐久性についても BMWクオリティーがちゃんと貫かれているようです。

購入直後は、いつ壊れるのかとビクビクしながら乗っていましたが、パワートレーンは 量産車と共通ですから心配することはなかったようです。
ただ、メンテナンスの点からみますと、E30と殆ど同じはずのエンジン関係のパーツでも やはり一部は特殊なものもあります。
こうしたパーツはドイツへのスペシャルオーダーになりますので、極力事前に発注し 工場への滞在時間を少なくするようにしていますが、それでも作業中に新たなパーツが 必要になったりして、ちょっとした修理にも思いのほか時間が掛かかることがあります。
まあ、これはある程度致し方ないことと諦めてます。

メンテ作業に関しては、残念ながら自分で行う技術も知識もないのでお任せ状態です。
工場に関しては、何か不都合があったときにドイツ本社等から情報を入手することも出 来るであろうことを期待して、BMWJapanの正規工場にお願いしていますが、これま でも色々とお世話になっていることもあり、非常に親切に応対して頂いています。
さて、以下は納車後のメンテナンスについて書いてみたいと思います。



(メンテナンスの方針)

購入当初、当面のメンテナンスの方針について考えたんですが、まずは「安心して長く 乗りたい」ということが第一でした。
ラインオフしてから9年以上経過している車ですので、いくら走行距離が少ないとは言え ゴム類はかなり劣化しているものと想像されました。
何台かのBMWと付き合ってきた自分の経験からしても、故障で立ち往生したケースは やはりこれらのゴム類のパーツの不具合が原因となっていましたので、まずは ゴム類のパーツをリフレッシュすることにしました。
とは言っても一気に交換するのはコスト的にも大変なので、トラブルが生じた際の走行 への影響の大きさや劣化の進行度合いにより次のように3つのグループに分けて、これを 3回の法定点検実施時に併せて行なうことにしました。

第1のグループ:タイヤ、ベルト類、第2のグループ:ウォータホース、燃料ホース、第 3のグループ:ブレーキホース、ブッシュ類、マウント類というような区分けです。
取り敢えず、第2のグループまでが終了しましたが、安心して遠乗りをこなすことが出来 るようになりました。
このほか、リレーなどの電気系統も立ち往生の原因となるケースが多いので、折りを 見てスペアパーツを揃えておこうかと思ってます。


1.タイヤ交換

納車後最初に行なったのはタイヤの交換です。
タイヤの製造ロットを見ると、新車当時のまま(ピレリP700)で、よく見るとサイド ウォールには細かい亀裂もありましたので、まずはタイヤを交換することにしました。
オリジナルのサイズ(225−45−16)は、車重とパワーからするとちょと太すぎる感じも あり、車のシャーシーを労って乗るためには、ホイルサイズを落として偏平度合いの 少ない(偏平率の高い)タイヤに換えようかとも思いましたが、取り敢えずはオリジナル サイズでミシュランのSX−GTを履かせることにしました。
速度レンジはZRからVRに落ちましたが、気になっていた乗り心地が改善されたうえ、 轍でハンドルが取られる現象もかなり少なくなりました。
また、ロードノイズも大部静かになりました。
余談ですが、この車、ステアリングフィールや乗り心地などが、タイヤの空気圧の 変化に比較的敏感なようです。
好みのポイント(僕は指定の値よりも少し高めにしています)を見つけたら、まめに チェックされることをお勧めします。


2.12か月点検とベルト類のリフレッシュ

購入後の初めての12か月点検では、法定点検と併せてベルト類、油脂類のリフレッシュ を実施しました。
とくにタイミングベルトは、以前乗っていた並行の325ix(MT)で僅か3万数 千kmで切れてしまいエンジンの上半分を交換するという痛い目に遭っていましたので、 M20エンジンのアキレス腱と割り切ってまずは交換することにしました。
各部点検の結果、格別消耗しているパーツや不具合はないようでした。
交換部品、調整作業は、予め依頼していたタイミングベルト、ファンベルト2本、ミッショ ンオイル、デフオイル、ブレーキフールド、スパークプラグの交換以外には、バルブク リアランス調整、バッテリー充電の作業しかなく、取り敢えずは極めて健康体であるこ とが確認できました。
なお、工賃、パーツ代の合計は約10万円でしたが、それぞれの単価はE30の料金と 大きく変わるところはないようです。


3.車検とホース類のリフレッシュ

その後1年間で約5000Kmを走行しましたが、後述するドアの不調以外はトラブル は皆無でした。
第2グループのパーツ交換に際しては、パーツの取り寄せの間、車に乗 れなくなってしまうのは残念なので、工場に予め必要な部品の取り寄せを依頼しておき ました。
本国オーダー分も含め約2週間でパーツは揃い、ラジエーター・ヒーター関係 の全ウォータホース交換、サーモスタット交換、エンジンルーム内燃料ホース交換、燃 料フィルター交換、エンジンオイル・オイルフィルター交換、パワーステアリングオイ ルタンクのオイル漏れ修理、ブレーキフールド交換、ブレーキ関係清掃などを実施しま した。
パワーステアリングオイルタンクのオイル漏れですが、オリジナルのホースクランプに 問題があるようです。
ネジで締め付けるタイプの対策品に交換するだけですから、一度チェックして見て ください。
ラジエーターのアッパーホースは、製造当初と仕様変更が行われたようで、ラジエーター の上部からアッパーホース本体に入る細いホースが無くなった関係上、ラジエーターの 当該個所に小さなゴムのキャップを付けなければならず、そのちっぽけなパーツが 足りなかったために2週間待つことになりました。
このほか、日本上陸後もずっと右側通行用のままになってたヘッドライトについては、 左側通行用にレンズを入替えてもらいました。
その他のゴム類では、一部が欠けていたトランクのウェザーストリップも交換しましたが、 まるで新車のように綺麗になって驚きました。
工賃、パーツ代の合計は約30万円でした。


4.ドアの修理

さて、お待ちかねのドアの故障と修理の顛末です。
購入してから一番恐れていたのが、皆さんもご想像のとおり例のモーターで上下に スライドするドアがいつか壊れるのではないかということです。
Z1のドアは車外からはキーホールと一体になったボタンを押すことにより、また車内 からはサイドシルのところにあるインナーハンドルを引くことにより、それぞれ開閉する 仕組みになっています。
三四郎号のドア故障の症状は、車外のボタンを押してもドアが上昇しない(閉まらない) というものでした。
この間、インナーハンドルからの操作では全く問題無くドアは上昇しましたので、 乗って走らせるには何ら支障はありませんでした。
症状が現れてからも、キーでロック、アンロックを繰り返すと作動することがあり、 しばらくはそのまま乗り続けていました。
症状から想像するに、リレーなどの電気系統の故障で大した作業では無かろうと思って いたのですが、工場で作業を開始してみるとそんなに簡単なことではありませんでした。

工場入庫後2週間目に「車検整備は概ね終了したが、ドアの修理はしばらく時間が掛か りそうだ」との連絡が入り、取り敢えずは現状を見てみようと思い工場見学に行ってき ました。
すると車は、リヤバンパー、左リアフェンダー、サイドパネルが外されて、リフトの上に 鎮座してました。
さらにドア駆動装置のところにクモの巣のように絡んでいるワイヤーハーネスのソケット は全て外されて、特殊なテスターに接続され電気関係のトラブルシュートの山場に差し 掛かったところでした。
担当の方から聞いた説明によれば、ドアのモーターを作動させるマイクロスイッチを 疑って、たまたま国内に在庫していたスイッチと交換したそうですが、今度はインナー からもドアが動かなくなってしまい、何とか入手した配線図をもとに、手探り状態で トラブルシュートをしているとのことでした。

この時初めて知ったのですが、ドアのモーターを作動させるマイクロスイッチは一つし かなく、車外の押しボタンと車内のインナーハンドルからは、それぞれ細い棒状のロッ ドが延びていて、そのロッドの先端が同じマイクロスイッチの小さなボタンを押すこと によりドアのモーターを作動させているのだそうです。
そしてこのマイクロスイッチは、ドアの駆動装置(これには別にウインドの駆動装置も セットになっていてパーツが密集しています)の奥深い所にあり、交換するのはなかなか 大変な作業だそうです。
スイッチを交換しても復旧しないということで作業は一時中断、アルピナロードスター を正規輸入したN社の工場に相談、結局は英文のリペアマニュアルを借用して作業を再 開することにしたそうです。
素人が見ても、ドアの駆動装置は一旦分解したら組上げるのが大変そうな代物で、ここまで 大掛かりなドアの修理を経験したメカニックは、ディーラーの各工場はもとよりN社の工場 にもおられないとの話でした。

余談ですが、裸になったZ1をしげしげと眺めていると、右のリヤ(リヤランプの裏く らいの場所です)に謎の物体を発見しました。
大きさは食パン1斤くらいで黒く塗られた固い物体です。叩くと鈍い音がして箱では なく重りのようなものです。
調べてみると名称は「バイブレーションダンパー」で、重さは17Kgもあるようです。
フロントに重りを入れた初期の911のようで、はずしたら運転フィーリングがどうなるのか? 振動が凄くなるのか? 疑問は膨らむばかりです。
やはりBMWテヒニック社による手作りの車、色々と奥が深い車なんだなぁ、と一人感心 してしまいました。
もう一つ余談で、これも最近分かったことなんですが、Z1のエンジンはE30の325i と同じだと思っていたら生意気にも専用のオイルクーラーが装備されてました。
真夏の渋滞でも水温が全く上がらないのはこのオイルクーラーの効果かもしれません。

さて、英文のリペアマニュアルも到着し、トラブルシュートを再開したところ、スイッ チのタイプが異なっていることが判明した由。
その後、本国オーダーにより問題のスイッチが揃い作業を再開。
リペアマニュアルには組上げ時の色々と細かい注意事項、各部品のクリアランスやドア 駆動ベルトのテンション等々、一つ一つ確認しながら組立てるように指示されていて、 なかなか大変な作業だったようです。
お蔭様でドアは完璧になりましたが、僅か一つのスイッチ(4万円近くしました!)の 交換に、1か月以上の時間と10万円を超える費用(後で聞いたところでは、トラブル シュートの時間は相当おまけしてくれたらしいです)掛かってしまいました。


5.オーディオの交換

この車、エンジンのサウンドがとても気持ち良いので、そこそこのペースで走っている 時は、オーディオの必要性をあまり感じないのですが、都内の渋滞を這い回るような時 は、音楽の一つも聞きたくなります。
購入当初から付いていたオーディオは、スピーカー、ヘッドユニットとも貧弱でしたので、 何とかしようと思ってました。
そこで、スピーカーはSONYの輸出用のコアキシャルタイプのユニットに交換、 ヘッドユニットは、最近のデザインが気に入らずナカミチがMDデッキを発売するという 噂を信じて待っていたのですが、結局待ちきれずにSONYの廉価版を付けちゃいました。
Z1のインテリアとのマッチングは今一つですが、音は取り敢えず聞けるようになりました。



ところで、嬉しい事にBOHPの会員の中に少しづつZ1にお乗りの方が増えていま す。
何人かの方とは、オフミやメイルなどで活発に情報交換しています。
暖かくなったら、またオフミをしたいと考えてますので、 新たに会員になられたZ1に お乗りの皆様、よろしければ三四郎あてメイル下さい。


[メンテ18]  (←前)