[メンテ21]
(←前)
(次→)
第23話 「足回りリフレッシュ作戦(その2)」
(作成:1999年5月25日 改訂:1999年6月4日)
(TEXT : 芝刈り / E34 525i )
今回は、トラストアーム(車両後方のフロントサスペンションアーム)の交
換を行いました。
サスペンションアームの名称について、E−34場合フロントには片側2本ず
つ計4本使ってありますが、ベントレーのマニュアルでの呼び方に倣って車両
前方のアームをコントロールアーム(僕の車の場合アルミ製。鉄の物もありま
すが、高価な日本仕様では恐らく全てのモデルがアルミ製ではないかと思いま
す。)、後方のアームをトラストアーム(鉄製のみ)として話を進めます。
ディーラーでは別の呼び方をしていますし、ショップによっても呼び方が違う
かもしれません。
今回のアームは、ステアリングアーム(ストラットの下端と連結されている部
品。)に対して、上に生えているのでアッパーアーム。一方、車両前方のアー
ムは下に生えているのでロアアームなどとも呼ばれているようです。
さて、今回換えたトラストアームのお仕事ですが、これもベントレーのマ
ニュアルによると、主に左右方向の動きを制御しているそうです。
一方、コントロールアームは主に前後方向の動きを制御しているそうです。
多くのサスペンションアームがそうであるように、このアームにもゴムブッ
シュが使ってあり、一見してもらえば良く分かると思うのですが、いかにも切
れやすそうな構造になっています。(写真がなくてすみません。)
そして、僕の車も予定通り切れていました。(苦笑)←もう笑うしかありま
せん。トホホ
このブッシュが駄目になると、50〜60m.p.h.でのブレーキング中ステアリ
ングのブレが発生するよ、と、ベンのマニュアルに書いてあります。
事実、僕が車を入手したときも、それはそれは凄いブレが80q/h位からの軽
いブレーキングでステアリングに発生していました。
ただ、これは主にその日最初の80q/h位からの”軽い”ブレーキングの時に
だけ発生し、その他の場合では余りでなかったように記憶しています。
以前、VTECインテグラに乗っていたとき一年点検でのホイールの取り付
けに際し、何とアルミホイールをインパクトレンチで締めるという荒業を使わ
れ、ディスクの歪みから似たような症状を体験したことがあり、それかなぁ?
とも思ったのですが、タイヤを付け直しても直りません。
(ちなみに、この時はホイールの取り付けやり直しで直りました。)
フロントのディスクも、前のオーナーからもらった明細を見ると、半年ほど前
の車検時に換えてあります。
これはまいったなぁと、10年来お世話になっている地元のタイヤハウスと
いうタイヤ屋さんに相談にいくと、どれどれと言って、トーイン調整とステアリング
ギアの遊びの調整をやってくれて、それであっさりと直ってしまいました。
しかし、最近また、たまにブレ−キング時に軽いブレが出てくるようになっ
て来ました。
そして先日のATF交換の時下周りを見せてもらうと、このブッシュが見事に
切れていて(反対側が見えていました!)、コリャ駄目だということで交換し
たしだいです。
本当は、ブッシュのみの打ち換えも可能ですが、それをやっている間、車を
浮かしておく場所がないのと、ボールジョイントも換えちまえ!って事でアー
ムも新品交換となりました。と、言うのは表向きで、本当は部品を手配すると
きそこまで考えなかっただけでした。ハハハ
新品のアームにはブッシュがついていなかったので、どうやって入れようか
と考え、会社の万力でも入るかなぁとも思いましたが、単なるゴムを入れるの
とは違い、鉄のカラー(Φ50くらい)がついているブッシュでは無理との判
断で、鉄工所をやっている仲間に油圧プレスない?と聞いたら在るよという、
うれしい返事です。
仲間の都合のいいときにブッシュの打ち込みにいったのですが、登場したのは
何と150トンプレス…。
何に使うの?と聞いたら、鉄板を曲げるのに使うといっていました。ソリャそ
うでしょうね。鉄工所なんですから。
周りには、厚さ1センチほどの曲がった鉄板がたくさん置いてありました。
そこらに転がっているパイプから丁度いい打ち込み用の冶具を造ってもら
い、いよいよ圧入です。が、さすがは150トンの威力。あっさりと入り、注
意していたにもかかわらず入りすぎたため、反対からの押し直しとなってしま
いました。(笑)
いよいよ交換ですが、天気のいい日に敢行です。
スタビのブッシュは会社でしましたが、今回は自宅で行いました。
■使った工具類
トルクレンチ
油圧ジャッキ
ウマ
アルミコーティングした、スポンジマット
(キャンプに使うような奴、寝板の代わりです。車の下にもぐっても結構明るくて、Goodです。)
22ミリボックス
22ミリメガネ
CRC
ハンマー
マイナスドライバー
エアインパクト(ホームセンターで5000円位の安物)
せっかくのいい天気の中、わざわざ付き合ってくれた仲間
■作業内容
とりあえずは車を持ち上げます。これをしないことには始まりません。
車止めをかけ、馬をかけたら車をゆすって安全確認です。
タイヤを外したら、それをサイドシルの下において万が一に備えます。あんな
物が落ちてきたら、即死間違いなしですからね。
タイヤがあれば、とりあえず死ぬことはないでしょう。
今回初めてエアインパクトを使ったのですが、いかに安物とはいえやっぱり
楽ですね。ホイール一本外すのに30秒くらいでしょうか。もう、涙物です。
この値段で、1/2in.サイズのインパクト用ボックスセットまでついてきた
のですから、信じられません。
下にもぐって、ボールジョイントのナットと、アームをクロスメンバーに取
り付けているボルト(ブッシュの入っている方)を緩めます。
サイズはどちらも22ミリです。
アームとクロスメンバーの接合部のなぜボルトを緩めたかというと、ナット側
はメガネは入るのですがホイールアーチの狭い隙間からしか入らず、まわす隙
間がないからです。
きっとガチガチに締まっているだろうから、緩まなかったら足でメガネを
蹴っぽれば外れるかな?と、想像していたのですが、割と簡単に腕の力だけで
緩んでくれました。まずは一安心です。
インパクトレンチは、周りのスペースが狭くて使えませんでした。ユニバーサ
ルジョイントを使っても無理だと思います。
ステアリングアームとのボールジョイントは、ご存知の方も多いと思います
が、テーパーかん合でつながっています。
ベンのマニュアルでは、軽く叩くと外れるよと書いてあり、右側はハンマーで
軽く叩いたら取れました。
外したアームのボールジョイントはブーツの切れもなく、動きが少々軽いか
な?くらいの物でガタもありませんでした。
これはブッシュの打ち換えだけのほうが経済的かもしれません。
取り付けですが、アームとクロスメンバーの接合部は簡単でしたが、ボール
ジョイントのほうがナイロンナットという緩み止めのついたナットを使ってお
り、ジョイントが共回りしてしまい締まりません。
そこで仕方なくジョイントと地面にマイナスドライバーと食わせて回り止めと
して締め付けました。
(ディーラーに後で聞いた話では、勘合を手で押しつけてから締めると締まる
そうです。)
締め付けトルクは、ボールジョイントとステアリングアームのナットが、9
3Nmです。
クロスメンバーとの接合ボルトは、まだこの時点では仮締めです。
本締めは、ブッシュの不正な変形を防ぐため、車をおろして規定の重りを乗
せたうえで行います。(Normal loaded position)
この時の締め付けトルクは、127Nmです。
※ Normal loaded position
フロントシートに各68Kg
リアシート中心に68Kg
トランクに21Kg
ガソリン満タン
右側は仮付けまで終わったので左に移ったのですが、右側では簡単に外れた
はずのボールジョイントの勘合がなかなか外れません。
ハンマーでいくら叩いても取れなく、BMPで買っておいたプーラーで外そう
としたら、てこのような形のプーラーではなく、ジョイントの周りを囲むよう
な形のため、タイロッドエンドには使えるのですが、今回のようにステアリン
グアームの中ほどに取りつけてあるジョイントには使えません。
仕方なく、また、ジョイントの下からジャッキをかけて車重を加えて持ち上
げ、更にCRCをかけてから小休止をして様子を見ることにしました。
30分位してから様子を見にくると、ジョイントの勘合部分だけで前側を持
ち上げているのに、まったく外れていません。
これは、もう手におえないと判断し、近所の工場に電話したところ土曜日とい
うことで対応できませんという返事。そこでディーラーに電話したら、とりあ
えず持ってきてくださいとの返事をもらい、右側を本締めしてからディーラー
に向かいました。
作業の様子を見ていると、二の腕ほども有りそうな大きなプーラーを取り出
して外しておりました。
それだけのものを使っても勘合が外れずに、プーラーが折れることも有るそう
です。
ついでにコントロールアームもやってもらおうと思ったのですが、その日は
時間がないということで出来ませんでした。
■感想
今回換えたトラストアームのブッシュは、左右とも完全に切れている状態
だったためかなりはっきりと効果を感じることが出来ました。
まだ,これからサスペンションを換えるためアライメントなどの調整はしてい
ない状態ですが、ステアリングがどっしりした感じがし、軽くブレ−キングを
してもブレなどがまったく発生しなくなりました。
ただ、直進性が今一つな気もしますし、強いブレ−キングでは右に流れること
があり、これは右フロントのサスから油が漏れるほど抜けているせいかなと想
像しています。
■後日談
これを書いている時点では、サスペンションの交換も終わっているのですが、
それでも何か直進性が悪いなぁと言う印象が続きました。
サスの交換が終わった時点でタイヤをP5000(225/60−15)へ変
更し、いつも通りトーイン、ギアボックスの調整をしてもらったのですが、ど
うもしっくりきません。
右のタイロッドエンドが甘いから、そのせいもあるのかと色々考えていました
が、先日エンジンマウント交換ついでに増し締めしようと車に潜ってみたら、
ブッシュの中にあるボルトを通すプラスチックの部品の取りつけ角度が違う事
に気がつき、これを直したら直進性が激変。非常に安定したものになりました。
平らな道ではそうでもないのですが、轍や段差があると、もうフラフラして気
を使いました。
両手で軽くハンドルを押さえればそんなに気にはならなかったのですが、で
も、意識からは抜けないと言った感じでした。
とりあえずは、一安心と言ったところです。
ディーラーに、左だけでなく、自分で交換した右のアームももう一度取りつ
け直してね、と言ったのがよく伝わっていなかったようです。
いよいよ、サス交換へ続く。
[メンテ21]
(←前)
(次→)