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第3話 「E34随想録(改訂版)」

(作成:1998年8月19日 改訂:1998年9月4日)

(TEXT : 越後屋 / E39 528i)


「E34随想録」という題名で[メンテ16]に掲載させて頂いていましたが、 やはりE34についての内容であれば新規開設されたメンテ21へということで、 今回、多少の変更を加えてリニューアルしたいと思います。

私自身、現在はE39に乗っていますが、その前2台に渡りE34を所有しておりました。
1代目は'90モデルの525iシングルカムで約2年間、2代目は'92モデルの525 iツインカムの 10thアニバーサリーで約5年間乗りました。

合計で7年強E34と過ごしてきた訳で、飽きるということが全く無くとても気に入っていました。
その前まではほぼ1〜2年で乗り換えていた状況を考えれば、驚くべき惚れ込みようといえるでしょう。
今でも街でE34を見ると、思わず振り向いてしまいます。

正直、内装についてはさすがに時代を感じさせます。特にBMWの場合、昔から 切立った断崖のようなダッシュボードデザインをしており、一般的な最近の車における 開放的な内装からすると、デザイン的というよりはいかにもスパルタンです。
しかしながら、外装デザインについては不思議と丸目4灯式のヘッドライトやスラントしてない フロントビュー、素直なフェンダーアーチやいかにも車らしいプロポーションが かえって好ましい印象を受けるのではないでしょうか。

BMW全般に言えることですが、過剰な空力設計で未来カーみたいな外観でハイテクをアピールしない。
そのくせ実は、エンジン出力、安全性、操縦性、様々な電子デバイス等、 優れた技術を持っている、というのが機械物好きに好まれる要因ではないでしょうか。

さて、以下に経験の範囲で思いつくままにE34について記します。
また、最後に現在乗っているE39との比較も載せたいと思います。
多少なりとも皆さんの参考になれば幸いです。



「E34随想録」

◆[E34 525i シングルカム(以降E34S)]

'90.1月登録、ダイアモンドブラック、サンルーフ、左ハンドル、 黒本革シート・ドア内張り(メーカーオーダーで納車半年ち)。


<故障実例>

1)テールランプ球切れ

納車後1ケ月の間に両方とも切れ、その後もほぼ半年毎に切れていた。
常時ランプ球はトランクに携行。

2)スピードメーター

停止直前にメーターの針がピョン・ピョンと80km/h位まで跳ね上がる。
デフの中のスピードセンサー交換で完治。

3)サンルーフ閉まらず

首都「拘束」道走行中、雨が降ってきたが数度操作しても閉まらず。
停止後エンジンを切り、再度試みると今度は反応。
これは一度きりの症状で、再発はなかった。



<走行感>

1)エンジン

何と言っても、ストレート6。
外から聞くと、重苦しく、うるさく、とても軽快には感じない。
スペック的にも170PS、22.6kgf・mと大したものではない。
しかし、回転上昇がアクセル以上にスムーズ。
雑誌等でもシルキー6とされているが、所有してはじめて理解。
又、音が感動もの。
3000rpmまでは期待通りの回転上昇感と音だが、そこを越えてからレッドゾーン (空ぶかしだとリミッターが効く)まで、期待を超える勢いでまっしぐら。
そして、その音質もかん高い挑戦的な音色に変化。
これがいわゆる「カムに乗る」というやつであろう。
この豹変ぶりに魅了されるとBMWから離れられなくなる。

2)ハンドリング

かっちりとしたFRのハンドリング。
トルクステアが嫌いな私としては、いかにもリアタイヤでの押出し感が掴める高い剛性が好印象。
そして、妙にふわふわしない足回りで車体の大きさも感じさせない。
また、圧雪路をノーマルタイヤで走行する時ハンドルできっかけを造り、アクセルにより コントロールする感覚が解りやすい。



◆[E34 525i ツインカム(以降E34T)]

仕様は次の通り。
'91.12月登録、BMWJAPAN 10thアニバーサリーモデル(サンルーフ、レカロ風本革シート、 ウッドパネル、Mテクステアリング、窓枠ブラックアウト他)ダイアモンドブラック、左ハンドル、 追金7万円で535用メッシュホイール。
購入動機はツインカム+5ATになったこと、在庫整理でない買い得感のある限定モデルだったこと、 金利が6.9〜3.9%になったこと等。


<故障実例>

1)左リアウィンドウ(納車時より)

開閉する時、中間地点でガタッと音がしながら引っ掛かりがあった。
二度、修理に出したが直らず。

2)右フロントウィンドウの異音

下がり切ったとき、ゴンという音がするようになった。
原因は、プラスチック製のストッパーが折れたとのこと。交換で完治。

3)ランプ切れ

・E34Sから相変らず、テールランプはよく切れる。電球は常備品。
・スピードメーター内を照すランプ。これは左右2ケ所に付いている為、
 片方切れたら両方交換しないと明るさが異なる(新しい方が妙に明るい)。
・ダッシュボード中央のエアコン吹出口の寒暖表示(青と赤)バックランプ。
・サンルーフスイッチのバックランプ。
 スイッチごと交換になり部品代で8千円程度。交換簡単、自分で3分。

4)エアコンが急に全く効かなくなる

普段ブロアーの勢いも良いのだが、夏の昼間猛暑の時稀に、まったく風がでなくなる。
オートエアコンでなかった為、普段1に設定していたが、急に風が出なくなった為、風量2に すると一時的に風が出る。が、すぐ止る。
結局それを繰り返し最大の4に到達するも、暫くするとまた風が出なくなる。
後は我慢のみ。2シーズンをこの状態で過した。
当初、修理をディーラーに依頼したが、ダッシュボードを分解した後の組付けがかなりズレていたり、 後付けのCDコントローラーが剥されてブラブラ状態で帰ってきたため、以降は出してない。
結局組付け他を自分でやり直した。
もちろん、そこのディーラーには、二度と行ってない。

5)きしみ音

故障ではないが、右リアドアー内(不確定)から、コトコト。
その他、いろんな所から、カタ・キシ。

6)ブッシュ交換

丸4年経過し、ハンドルを少し右に向けてないと直進走行できなくなった。
アライメント調整し、テスターでは0度でハンドルが真っ直ぐとなるよう調整しても左に流れる。
道路勾配をキャンセルしても(右のみ轍に落とす、又は平らな高速道路を走行)左に流れる。
リフトアップしてよく観察すると、フロントのタイロッドを支えるブッシュに亀裂発見。
これを交換したところ、今度はイノシシのような直進性を示す。



<走行感>

1)エンジン

ザ・ツインカム。192PS、25.0kgf/m。
悪かろうはずがない。しかも5速AT。
しかし、期待したほどのパワー感がない・・・慣しでトロトロ走っているうちに、E34Sのエンジン フィールを懐かしく、ひいきめに見るようになったせいかも知れない。
それに、あの3000rpmからの豹変ぶりがない(実はこれが最も寂しい)。
下から既にパワーが出ているためか、5ATのためか不明。
ただ、音質が乾き、いかにも回りそうで、アイドリング時の静かさと滑らかさはE34Sとは別物。
エンジンのデザインも洗練され、排気音も無駄な騒音がなく効率よさそうで近代的。
そのくせ高回転域ではレーシングエンジンのような咆哮を奏で、やはりエンジン屋だと ニンマリ・・・しかし、燃費に関しては困ったもの。
E34Sのレギュラー仕様に対してE34Tはハイオク+5ATであるのに、ほぼ同じ距離(都内圏・土日のみ 使用で6.8km/L程度)しか走らない。
つまりハイオクになった分がそのまま燃費アップに直結。
当時80Lを満タンにすると必ず福沢先生とのお別れがあり、寂しい思いをした。

2)ハンドリング

Mテクステアリングの為か、ハンドリングがしっかりしており、狙ったラインをトレース可能。
少なめではあるが、中立付近での遊びも確保されており、高速でも安心。



「E34とE39の比較」


<故障比較>

1) テールランプ球切れ

E34ではランプが点灯していない時であっても、常時微電流を流してバルブ切れを監視していたため、 かえって寿命を縮めることもあったが、E39では点灯時のみの監視と仕様変更になったため、 バルブ切れのトラブルはほぼ解消された。

2) E39でも相変わらず、電装系が弱い

E34でもメーター回りの警告灯不良、ウィンドウ関係のフリーズ、頻繁なバルブ切れ等の 電装系弱点はあったが、E39でも基本的には相変わらずといったところ。
E39では、純正でオンボードコンピューターが付き、セットオプションで純正のモニターも付く。
これがくせもので、7〜8割の率でフリーズを起こす。
電装系の装備が増え豪華になった分、かえってトラブルを呼んでいるようだ。

3) オーディオ関係の配線について

E34は通常のエナメル線により配線されていたが、E39は随所にバスケーブルを使っている。
これは一種の光ファイバーみたいなもので、1本の線に複数の情報が流れるものである。
従ってE34の場合のように、ナビゲーションの取り付け等は通電テスターを使用しどれがACCで、 ここからカプラーで分岐しよう…というような勝手な事が簡単にできない。
他に影響する可能性があるからだ。



<仕様比較>

1) 内装のコストダウン

E34ではダッシュボード中央のエアコン吹出口の寒暖表示(青と赤)にバックランプがあったが、 E39では光らない。
また、E34のツインカムモデルではハンドル脇の小物入れが付いた。
これには蓋もついており小物入れとして重宝していたが、E39では蓋なしの小さな小物入れに変更。

2) E39は外装の鉄板が薄い

これはご注意。E34の時は感じなかったが、ボディーの鉄板厚が薄くなったように感じる。
理由はふたつ。
まず、ボディーコーティングに出した際、ドアに歪みが残ったこと。業者の質にもよるが、 そもそも鉄板が薄くなったのではないか。
コーティングしているところをみると、びっくりするほどへこむ。
ふたつめは、ガソリンスタンド等で不用心にドアを強く閉められるときである。
この時、ドアハンドルを持たれるが、親指でボディーを押す人がいる。
これをやられると指で押したところにへこみが残るのである。
埃が着いてない状態で、光の中で斜めからよく見ないとわからないが、ドアハンドルの2〜3センチ] 上にゆがみが着いているE39は多い。



<走行感覚比較>

1) ハンドリング

E34ではしっかりしており、高速でも安心であったハンドリングだが、 E39では剛性感に不足を感じる。
アルミサスのため、ハンドルの剛性をあまり上げられないのかもしれないが、ハンドルの軸そのものが 捩れるような感じがある。
100〜120km/hでのハンドルの振れもこの辺に関係しているのではないかと思われる。

2) キシミ音

E34ではいろんな所から、カタ・コト系の音がしたが、E39の場合ドアきしみ音がひどい。
'97.7月以降は対策具品が出たが、E39について別途行ったトラブル調査でも半数で症状が出ていた。
余談だが、E34はドアの建付けが悪い車が多い。フロント、リアとも左右のドアの開き方、 或いは閉まりかたが異なる。
ボディー側のドアキャッチ位置とドアの関係がうまくない事が原因だが、ドアヒンジそのものの 溶接位置不良もある。
これがキシミの元凶の場合もある。



<番外編>

1) E39は洗車が楽。特にフロント回り。

E34ではキドニーグリル脇の横ルーバーや、ヘッドライトリングのクロームメッキは結構洗いにくい。
E39はプラスチックカバーやエンジンフードで覆われているため、サットひと拭き。

2) BMWは後姿美人。

BMWは一般に、丸目4灯のフロントビューが特徴とされているが、個人的な感想としては、 斜め後ろからのリアフェンダー、Cピラー、ルーフラインに繋がる造形が最も美しいと思う。
また、MBにはないサイドのパリッとしたプレスライン、これがまた走りを予感させる。



以上、かなり個人的かつ勝手なことを書いてしまいましたが、E34はほんとに名車だと思います。
しかし、機械である以上、故障、ヘタリは致し方ないところでもあります。
いちファンとしてもぜひ、E34乗りの方にお願いしたいことがあります。
「できるだけよいコンディションを保ちながら、安全に楽しいE34ライフを送ってください」
街でくたびれたE34、無謀なE34、そして事故に遭ったE34を見たくないので。


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