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第12話 「覚悟を決める!」
(作成:2001年10月23日 改訂:2001年10月24日)
(TEXT & PHOTO : kuma3 / E21-320i )
“バイエルンの山猫” E-21系320iA 再生物語
Vol.2:‘92年12月号 『覚悟を決める!』
秋も深まったある日、いつものように320iのエンジンルームをのぞきこむ。3ヶ月で1/3ほど減る
エンジンオイル、何度掃除しても2サイクルエンジン並みに汚れるプラグ、ガレージの床に残る
各種オイルの染み…。現状でも乗れないわけじゃないけれど、こんな状態でいいんだろうか?
どうせタダでもらった車だし、乗れなくなったらツブせばいいじゃん!
けれど、あんなにあこがれてた車なのに…。バラす?マニュアルもデータも何も無いんだよ…。
いくつもの思いが頭の中に浮かんでは消える毎日。乗り始めの頃、バルブクリアランスを調整する
為に取り外したカム・カバーの裏側。こびりついたスラッジを拭き取ると現れたBMWのマークの
鈍い輝き。妙な威圧感を感じた…。
「6気筒のDOHCをバラそうってんじゃないし、シンプルなSOHC4気筒でしょ、やってみれば?」と
そそのかす後輩の言葉に「…そう…だな。冬場はあまり乗ってやりたくないから(凍結防止剤が…)」
と、なかば見切り発車的な心境でレンチをかけたのは92年12月21日。思い切ってボンネットを
外した(もちろんカーボン製ではないので重いです!)ので、作業性は良かったです。クリスマス
にはヘッドを降ろし、正月をはさんで1月6日にシリンダブロック以下をチェーンブロックで吊り上げ
(これだけは作業場で行った)て降ろした。ピストンやリングを頼んだらマーレ製の0.5mmオーバー
サイズしか手に入らなかったので、シリンダをボーリング加工へ外注に出した。(注:総排気量
はφ89.0×80で1990ccからφ89.5×80で2012ccに)
今回交換したのは、デスビのキャップとロータ、ハイテンションコード、ピストン及びリング
セット(×4)、タイミングチェーンのテンショナー、クランクシャフトのオイルシール(前・後)、バルブ
ステムのオイルシール(×8)、プロペラシャフト前側のジョイントラバー、二次エアバルブ、各ガスケット
及びパッキンです。バルブはIN・EXとも汚れを落として研磨(ステム以外)して、擦り合わせ
再使用しました。
作業初期。サージタンク内部はブローバイガス等で汚れまくり、一部は廃油状態で…。
ヘッドカバー内は予想以上のスラッジで、真っ黒になっていました。かわいそう…。
いやいやピストンも負けてはいません。カーボンの厚みは1mm以上ありました!。
どこが弁やらプラグやら…とほほ状態のシリンダヘッド下側。ひどいなぁー。
細かなパーツの仕分けにはフィルムの空ケースが活躍。ガムテープでまとめてメモ書きしておくと迷いません。
上左から右へ元から研磨後のバルブ。ステムに布ガムテープを3回巻きつけ
電動ドリルで回しながらスクレーパ・ワイヤブラシ・サンドペーパ等で磨く
(擦り合わせしろを残して!)
正月明け早々にシリンダブロックを吊り上げて降ろしました。ラジエータ
下にはA/Tオイルクーラが内蔵されているので、そのままガードしておいて。
手押し車とビールの空ケースで作った仮設作業台。移動が容易で、縛りつける
為のパイプもしっかりしていてGoo!
マニュアルがないから基本通りに「生理整頓、良いこの印…」。
細いソケットで「日←段付まで」ステムシールを打ち込んでいます。
入り過ぎるとシールが切れてオイルが下がります。
ピストンスライダがない場合は、モリブデンをシリンダ内とリング周りに塗り
たくり「割り箸」で押さえながら頭頂を少しずつ押し込めばOK!。
【厳禁】−ドライバはリングが欠ける。
バルブクリアランスの調整は、ロッカーアームのナットをゆるめ
真ん中のコマに細いアーレンキー等を差し込んで回して行います。
シリンダ以下が搭載されて作業も大詰めです。ピストンも見納めになります。
復元終了。ボンネットを外し正面からエンジンを見る機会も当分無い…と信じて…。
@取り外したピストンは汚れを落としてそのまま飾っても良いのですが、頭頂がまっ平らなので
逆さにして『灰皿』にするとちょっと「おたっきー」です。ピストンピンを忘れずに差し込んで
おかないと、穴から灰がこぼれ出ます。高圧縮のピストンでは頭頂が出っ張っていて不安定に
なるのでオススメできません。灰はこまめに捨てて乾燥気味にしないとアルミが錆る?
灰皿にリサイクルしたピストン。いかにも…系のノリしています。
ポート研磨(内面の鏡面加工)については諸説がありますが、今回はサージタンク・INマニ・ヘッド・
EXマニの各接続部分にボルト穴を開けた厚紙をあてがって口の形状を写し取り、反対側にあて
がいながら段付きを削って形状を合わせる程度で、マニホールドやサージタンクの内側は余程
大きな凸以外は削っていません。ゴルフボールの表面と同様に少し凹凸があった方が小さな
渦を巻いてスムーズに流れるのでは?と判断したためです。
バルブクリアランスなどの調整値は正規ディーラーに問い合わせながら組み上げ、再び火が
入ったのは93年2月16日。
自分自身の中で、一つの山を越えた気がして、この車と離れられないものを感じました。
〜 続く 〜
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