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第34話 「番外編2『ツインモードクラッチシステム試乗記』」

(作成:2000年4月26日 改訂:2000年5月9日)

(TEXT & PHOTO : 宮田 / E36-M3 )

最近のATはステップトロニックを例にとると、MTのように 自分でギアを操作できるトルコンが多くなっています。
今回、それと逆??の発想をもったMTでクラッチを踏まずに ギアを操作するデバイスを搭載したBMW Z3に試乗してきたので そのインプレを綴ってみます。

MT車に乗りたいけど、家族がMTの運転ができない。。。
でもホントのところはMT車にしたい。。。ということで、 泣く泣く??AT車にした方もいるのではないかと思います。
しかし、最近のATはBMWでいうならステップトロニック、 ALPINAでいうならスイッチトロニック、他国産でも同じように ATでMTのようにギアチェンジできるデバイスが数多く出ているのは みなさんもご存じのことと思います。
しかしその中身はトルコン制御を操作しているので、MTのような 『クラッチを切る → ギアチェンジ → クラッチを繋ぐ』という MT車独特の感じではないのが仕方ないところです。

ただMT車の場合、左足でクラッチ操作をするという、 人によっては煩わしさを感じる方もいるのではないでしょうか??
その煩わしさを解決したのが、E36型 /// M3後期型(通称M3C)に搭載されたSMGシステムです。
いわゆるシーケンシャルシフトといって、シフトレバーの操作だけで 『クラッチを切る → ギアチェンジ → クラッチを繋ぐ』の 連続した動作をしてくれるデバイスです。
(簡単に書いてしまいましたが、実際にはもっと複雑な制御&動作をしています。
 詳しい説明は「 http://www.bohp.net/html2/mentc22.htm」や
 「 http://www.ne.jp/asahi/kitaho2/bmw-m3smg/bmwsmg.htm」等に
 記されています。)
これに似た仕組みとして、フェラーリのF1システムや、 ALFAのセレスピード等のデバイスも近いのではないかと思います。

ただBMWで搭載されたのが現在のところ /// M3だけなので同じ仕組みを他のグレードにも・・・
という声をときどき耳にしていました。

前置きはこのくらいにして、シーケンシャルシフトとは異なるのですが、 MT車でクラッチを踏まずにギアチェンジするデバイスが 今回試乗してきたZ3に搭載されていたツインモードクラッチシステムです。

MTのシフトゲート、シフト操作はMTそのまま、 ただクラッチを踏まなくてもMTシフト操作ができるというものです。
(基本的な説明は
  http://www.j-warehouse.co.jp/page2/twpage4.html
 に出ています。)
端的に言うとシフトレバーに付けられたボタンを操作することによって 油圧アクチュエータでクラッチの「切る」「繋ぐ」の動作をするものです。

ボタンは押すとクラッチが切れ、離すとクラッチが繋がるようになっています。


ツインモードクラッチ


今回試乗したZ3ではボンネット内の下画像の位置に油圧アクチュエータが 搭載されていました。


ツインモードクラッチ


ツインモードクラッチ


これを利用したときに走行中のドライバーが行う動作としては、
 ・シフトレバーのボタンを押す。
 ・今入っているシフトゲートからシフトレバーを抜き、ボタンを押したまま
  目的とするシフトゲートへシフトレバーを入れる。
 ・ボタンを離す。
となりますが、シフトアップ/ダウン時にエンジンの回転数を合わせてクラッチを 繋ぎたいという場合は、その操作(アクセルを煽り回転数を合わせる動作)は ドライバー自らが行う必要があります。

・・・で実際に試乗した感じとしては、一言で言うと、
MT車、AT車のそれぞれのいいところを融合させたデバイス。
といった印象を受けました。
またクラッチを踏まなくても違和感がないか...ということも、 さすがに初めは違和感がありますが、慣れてしまえば「なんて楽なんだろう。。。」 と思ってしまうくらいです。
またギアチェンジにギクシャクしないかということも、幸い私の場合、 MT車を運転していることもあり、十数秒で慣れてしまいました。
ただ、MT車の癖でクラッチを踏みたくなってしまうのは 致し方ないところなのですが、そこはグッと我慢??
まぁ、間違えてクラッチを踏んでしまった場合にも従来通りの MT車になる。というところがよく考えられてるなぁ。。。と感心するところです。
また、MT車にしばらく乗ってない方でも2〜3分で慣れてしまうのではないでしょうか。

クラッチの繋ぎ方も非常にスムーズで、足操作でクラッチミスをしたときの 車がガクガクくるような感覚は全くないのが不思議なところです。
聞くと、エンジン回転パルス、車速等のセンサ類から情報を拾い、 クラッチの繋ぎ方をその状況に応じて変化させていたり、 車速が20km/h以下(設定変更可能)ではノッキング防止のために 自動的にクラッチを切ったりしているとのことなので かなり賢いデバイスになっているようです。
クラッチのスムーズな繋ぎ方はクラッチそのものを保護する目的でもあるようです。

またシフトを1速やリバースに入れた発進時の場合には そのシフトゲートに入れたときに半クラッチ状態になり、 シフトレバーのボタンを押したままにしなくてもいいというところも AT車のいいところを採っているようにも感じました。
ただ半クラッチ状態なので、ブレーキペダルを踏んでないと クリーピングで動いてしまうのには注意しなければならないところです。
しかし逆な考え方をすると、クリーピングがあることによって 発進時にはボタンを押さずにアクセルだけで発進できるところは 大変便利にも思うところです。

さらに安全機構として、停止した状態でニュートラル位置から シフトを入れる場合、ブレーキを踏んでないとシフトゲートへ 入らない構造にもなっています。
(これもAT車のいいところを採ってるように思えます。)
ボタンを押すだけで、シフトが入ってしまって そのときにアクセルを煽ってたりすると、急発進してしまいますからね。

下の画像は、クラッチを踏まなくともシフトが1速に入ってる様子を撮ったものです。
タコメータを見るとエンジンがかかってるのが分かります。
ブレーキペダルを踏んでいるのは、この画像を撮るために クリーピングで車が動いてしまうのを防いでもらってるためです。


ツインモードクラッチ


・・・と長文になってしまいましたが、 個人的にはこのデバイスはかなりよく仕上がってると感じました。
ちなみに現時点(2000年4月)での実績は数十台あり、その中には フェラーリやポルシェ、スカイラインGT-Rなどのハイパワー車も含まれてる そうです。また、E39-M5へ装着したいという話もあるとか...
つまりエンジンパワーに関係なく、既存MT車であれば車種に関係なく 装着することができるデバイスということのようです。
(ただクラッチを繋ぐタイミングを制御するプログラムは
 その車種専用になるとのことです。)
また、試乗したZ3ですが、このデバイスを付けてから3年、3万kmが 経っているとのことですが、このデバイスのトラブルは一度もないようです。
これはかなり信頼性があるということでしょうか。

以上まとめると、AT車の楽さと、MT車の操る楽しさの両面を持ったデバイス ではないかと思います。
なお、現状のAT限定免許制度では運転できないそうなので、ご注意を...


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