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第3話 「歌姫」

(作成:1997年9月2日 改訂:1997年12月11日)

(TEXT : obata / R1100RS )

1975年、忌まわしい二輪免許限定制度1)が始まった年でございます。
16になったのが翌年の4月。典型的Z22)世代の私は、 絶望の余り何をトチ狂ったか馬術部3)なんぞに入ったりしておりました。 結局単車に乗り始めたのはハタチ頃、遅いほうでございます。お約束の紆余曲折4)の後、 憧れのZ2を我が物といたしました。
しかるに若さゆえの誤ちでございましょう、諸般の事情から四輪に走らざるを得なくなり、 また同じKawasakiでもベツクチ5)のほうにうつつをぬかすなぞ、 単車乗りといたしましては、誠に傲慢不遜6)な暮らしを送っておりました。 人様より大分長い学生生活(放蕩とお読みください。なにせナミの方々の優に3倍はあります) も終わる頃、喧嘩ッ早い性格が災いいたしまして破門、 そして暫くのあいだ国外退去7)と相成りました。 ほんと損な性分でございます。

しかし、かの地は冬の厳しさ8)を除けばなかなかよいところで、 加えて元来が嫌いでない私でございますから、忽ちのうちにある出戻りの独逸娘と恋に落ちたのでございます。 この独逸娘は、いささか大柄でちょっぴり気が強く9) 一見近寄り難い雰囲気を持っておりましたが、 大変従順で素直でいかなる時でも大層気丈な娘でございました。 異境の地での慣れぬ暮らし、しかし私たちに言葉は不要10)、 それはそれは激しく愛し合ったのでございます。 週末ともなりますと、アウトバーン11)にガッセにと時には国境まで超えて、 何処に参るときもいつでも一緒でございました。 牧歌の如く美しきかの地の風光に包まれて (ガードレールに 「○×ちゃんコーナー」12) などと赤スプレーの下手な書きなぐりがあって幻滅させられるようなことは決してございませんでした) 私たちは時を惜しむように一つ13)になったのでございます。 この娘と共にすごした日々、それはまた私の青春最後の自由と夢の日々でもありました。

そう、まさに夢でございました。

「夢」という字は、しかし人という字と共に毫すらば即ち「儚」。 この独逸娘を伴っての帰国は私にとっては許されぬ14)こと。
別れの朝は小雨、濡れたベルジャン路15)に、 しかし気丈なこの娘はいつもと変わらぬ確かな足どり16)で、 私の許から去っていったのでございます。

帰国いたしましてからは幸いにして今の職も得、 めでたくこの春別の独逸娘が浜松より私の許に参りました。 かの娘と容貌は瓜二つにしてしかし肌の色は独逸白色17) ・二つ年下でございます。 既にご案内のようにささいな不幸18) もございましたけれど、今は平凡ながら幸せな田舎暮らし19)でございます。

今回はこれにて〜「歌姫」20)〜のおしまい。皆様、アウフ・ビーダージーン!


(^_^)/~

1)
、大自二教習開始!
2)
kawasakiの750、Z3の間違いじゃないってば
3)
跨りもののくせして四駆
4)
何回目に合格しました?
5)
水の上の例のあれです
6)
お好きな単語で罵倒してください
7)
もう嬉しくって嬉しくって
8)
半端じゃないって、オープンウイルスなんぞ一発よ
9)
重い、でかい…
10)
単車相手に喋ってどーする
11)
初めての時はすんげー恐かった
12)
いちいち読んでた日には自分の名前が付いちゃうって
13)
人車一体感ってやつですか
14)
運賃、予備検、登録その他でんああ万円、新車買えるわ
15)
ベルギー道路、石畳路って素直に書けよ
16)
ABS+テレレバーの威力はさすがだ
17)
ジャーマン・ホワイト、全塗だなどとは言わないよーに
18)
大変な災難、しかも納車当日
19)
忙しくってツーリングにも行けねーぜ
20)
鴎外先生のです、中○み○きの方だと思った人は………

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