寒いっ…ですねえ。
単車屋にはまさに受難の季節。
会員諸氏の中には二輪冬眠モード1)に入られた方も
多い2)んじゃないでしょうか。
小生も厚手のブルゾン、グローブに革パン3)の冬装束。
そして今年は思い切って半長靴を新調。ちょっと張り込んでBMW純正ゴアテックスブーツです。
これ、すごく暖かい4)んですよね。もちろん例のご紋5)
も燦然と輝いております。
近所のおばちゃん、
「やっぱりドイツのモノはしっかり出来てるねェ。」
「だアね。」
おばちゃん、ゴメン。これ、Made in Italy6)…
かつてBMWはドイツクラフトマンシップの結晶、珠玉の逸品として最上級の賛辞を奉られてきました。
曰く、
“シルクの如く滑らかで上品な乗り味”
“寡黙な覇者”
“キング・オブ・ハイウエイ”
“二輪のロールスロイス”
“エンジンはオイル染みひとつ無し”
などなど。
で、ウチのバヤイ。
チビるんですよ、オイルを。これ、実は現行R259ユニットの有名な持病。
「『ビーエム』ってオイル漏れするよ。国産の方が絶対いいって。」
有名バイク店7)で店員のお兄さん、鮮やかに言い放ったもんなァ。
ウチの症状はカムカバーの周囲からしっとりと。名古屋弁でいう「ち〜と激しくなぶったりしや〜すと、
すンぐ濡れてくるでなも。や〜らしいでかんわ。」8)
今まで見聞きした症状、ネットで流れている情報からすると
漏洩個所はヘッドカバーやプラグの周囲、カムカバー、エンジン左のオイル配管取り出し部、
油量点検窓の隈など。オイル交換の時にこぼしたオイルが廻ったのと勘違いしていたオーナーもいたとか。
洗車をしたところオイルフィラーキャップから水が入ったなんてのはシャレにならないです。凄いのは、
メインシャフトのシールからクラッチ側へ漏れた9)なんてのも。
で、傾向と対策。
一般的に空冷エンジン10)は
シリンダ周囲からのオイル漏れ11)が多いのですが、
BMWではあまり聞きません。このあたりは流石、ただし国産と比べちゃあいけません。
ちゃんと面倒見てやってはじめて10年10万キロ品質12)の「ベン兵衛」だもん。
元凶はほとんどがゴム・樹脂系部品13)とアルミガスケット。
アルミガスケットについては、規定トルクで正しくシメないと(正しくシメても)うまく潰れてくれないとか。
エンジンやミッションのプラグ類はトルクレンチを使いましょう。
ソケットレンチの頭持ってググっと締めておしまいという国産系のノリは×。
ましてや、振動の多いツインですから緩んできますよ。もち、一回使ったガスケットを裏返して再使用なんぞもっての外。
ゴム・樹脂系部品についてはBMWも苦慮しているようで、様々な対策部品が設定されています。
ヘッドカバーガスケットは芯の入ったようなコシのあるものに変更。
カムカバーガスケットは同じゴムリングですが初期のものに比べて太くなっているみたいです。
ただゴム・樹脂パーツは、組み付け時の歪みが(接着部分以外は)
乗ってる間に振動で抜けて馴染んで14)くることもあります。
いずれにしても、特に低年式モデルにお乗りの方でどうもオイル滲みが気になる方、
一度ディーラーで御相談されてはどうでしょう。
これが対策その1。
カムカバーや注油口周囲のオイル滲みや漏れは、樹脂パーツのバリ取りで改善されることもあるそうです。
ガスケットの嵌まっている溝にバリがある場合、これは絶対に退治するべし。
オイルフィラーキャップ取り付け部の樹脂パーツはドライバで軽くこじって外せますがかなり柔いです。
カムカバーの脱着は5mmの六角一本でOK、相手がアルミですから手加減を。
Oリングのガスケットは整備書15)によれば再使用不可。
再組み付けの際はたっぷりグリスを塗ってやらないとOリングが歪みます。
これが対策その2。
オイルを鉱物油に換えてみるのも手。欧米のHPでは、ディーラー16)ですら
「あなたのエンジンのためにはハナっからの全合成油の使用はすんごくヤバイぞ。」
みたいな書き方をしているところもあるぐらい。
全般的な論調としては「10000マイル(約16000キロ)走行迄レギュラーオイルの使用を
強く推奨」しているようです。化学合成油の使用はそれから、
それも「お金持ちなら御自由にどうぞ」的ニュアンス。
「指定グレードであるところのガソリン用HD、API分類におけるSE〜SG級に合致したるものであらば、
由来の一切を問わず。その代わり交換時期の3000キロに拘らず、
タレたり腐ったりして来たと思ったらケチらずじゃんじゃん換えるべし。
空油冷エンジンの健康の為にはこれが大変宜しい。」ですって。
ちなみに整備書では、CC・CD級オイルの併用までをも可としています。
実際、下手なクルマよりはるかにタフ17)なエンジンです。
でもやっぱり、夏場の日本、それも東京の渋滞の中でもがくなら、
オイル粘度の選択や交換時期には十分過ぎるぐらい神経遣ってあげましょう。
あ〜、田舎暮らしでよかった。
これが対策その3。
天下のボクサーツインのこれまた有名な持病とあらば、
この広い世界で誰かしら根本的治療法を考えてくれてる優しくて賢いヒトが絶対いる筈。
そこで頼りになるのがインターネット。で、とうとう見つけました。
その名もインターネットBMWライダーズクラブ。BOHPのリンク→二輪に既に掲載していただいていますから
興味のある方はぜひ一度覗いてみて下さい。その中のtechページにアメリカはマイアミの
山猫(Dali Meeow)氏18)の投稿。
なんでも、Viton社のOリングが大層具合がいいそうです。
オイルフィラーキャップのベース部分用とカムカバー部分用の2種3ケ、
希望とあれば世界中何処へも$8で送るとあります。
もともと軍用に開発されたものなどと書いてありまして、何やら霊験あらたかな気がして
矢も盾も堪らずさっそくトライ。
届いたOリングは、濃茶色で純正に比べてかなり柔らか目。何でもこの持病もちに施術したところ、
30000マイル(48000キロ)許り走ってもなお再発の予兆すらないとのこと。
山猫氏>ニッポンにおける汝の状況を適宜報告されたし。
小生>ガッテン、お安い御用ってもんよ。
これぞネットの醍醐味、有難味19)って奴ですよね。
これが対策その4。
で、
夏の暑い盛り、対策その2と4を実施いたしました。
現在までオイル漏洩はぴたっと止まっております。
次のオイル交換ではオイルも鉱物油に戻してみる予定。
マフラーから燃え残りのオイルが垂れてきたり、冬場の始動性に低下を来たすのは明らかですが、
山猫氏に「全合成油を用いたりし汝の原動機の僥倖を祈る。」などと脅された日には
やっぱり気になって仕方ありません。
ボクサーのオイル消費は新車のうちはかなり多め。1000キロ走って多い時で500ccいったという例もあります。
仕様ではキロ当り1リッター迄は正常消費量だって、すごいな、これは。
「減ったもんは足しゃいいのョ」とはある外人さん20)の弁。
なにはともあれ、ロングツーリングでは雨具忘れてもオイルの1リッタ−缶は忘れずに携行いたしましょう。
それから、サイドスタンドキャンセラー装着でもアイドリングはセンスタ掛け厳守。
サイド掛けでは左側のヘッドが下を向くので、オイルが燃えてマフラーから白煙吐く場合があるそうです。
特にキャタ装着車ではこれは後々痛い目に会うこと火を見るより明らか。
オイル量は、エンジン動作温度まで暖気してから最低で10分待って確認。
空油冷エンジンは唯でさえオイルラインが長い21)上、
Rはセパレート型のオイルクーラー、RTはサーモスタット付き、
オイルがある程度オイルパンに戻るには時間がかかります。鉱物油に換えた場合更にヒマがかかるとか。
オイルは入れすぎると吹いちゃいますので要注意。
シリンダーが横向いてるのを嫌ってほど思い知らされるとのことです。
また、車両停止状態の機関運転は整備書によると最長20分まで。
で、
洗車しててオイルフィラーキャップから水入っちゃった例のオーナー氏。現在はというと、
ヘッドにシャワーキャップかぶせて洗ってるそうです。確かにアタマにかぶせるモノには違いないわけで
妙にナットク……。
今回はこれにて〜「御機嫌如何」22)〜のおしまい。
長くなってすいません。皆様、よいお年をお迎え下さい。
アウフ・ビーダージーンー!
●R1100系締付トルク一覧(今回取り上げたものでオナハンに記載のないもの)
パーツ名 | トルク[N・m] | トルク[Kgf・cm] |
エンジンオイルドレーンプラグ | 32 | 326 |
エンジンオイルフィルター | 11 | 112 |
スパークプラグ | 20 | 204 |
ギヤボックスオイルフィラープラグ | 23 | 235 |
ギヤボックスオイルドレーンプラグ | 23 | 235 |
リヤホイールドライブオイルフィラープラグ | 23 | 235 |
リヤホイールドライブオイルドレーンプラグ | 23 | 235 |
カムシャフトシーリングカバー | 9 | 92 |